DTM
Round 3 Budapest

DTM第3戦、ブダペスト。
雨が波乱を呼んだハンガロリンク。BMWが表彰台を独占。

ハンディキャップを超えて。DTMに、新たな1ページが加わる。

6月1日(金)、ブダペスト。DTM第3戦が行われるこの地に、ひとりのアスリートの姿があった。アレックス・ザナルディ。1990年代にはF1やCARTで活躍するレーシング・ドライバーとして名を知られたが、2001年のCARTシリーズ第16戦ラウジッツリンクにて、深刻なクラッシュにより両足を切断する悲劇に見舞われてしまう。しかし、この絶望的とも言える状況から、彼は不屈の闘志で奇跡の復活を遂げていく。2005年には特別仕様のBMW 320iを駆り、WTCC(世界ツーリングカー選手権)にフル参戦。そして2009年にWTCCを引退するとハンドサイクルに転向、これまでにパラリンピックで4つの金メダルを獲得し、ザナルディは名実ともにトップ・アスリートに返り咲いた。
今回のラウンドに先立ち、ザナルディが第7戦ミサノにおいて、ゲスト・ドライバーとしてBMWからDTMに参戦することが発表された。ハンドサイクル転向後もレース活動は継続しており、2012年にBMW M3 DTMをテストしたほか、近年のレースでは2016年のイタリアGT選手権第7戦ムジェロで、ゲスト・ドライバーとしての参戦にも関わらず、ハンド・ドライブを可能にしたBMW M6 GT3でなんと優勝を飾っている。51歳にしていまだ情熱衰えぬ「スーパースター」の参戦が、今年DTM初開催となるミサノ・ラウンドにさらなる華を添えることになる。

アレックス・ザナルディ
「キャリアにおける“最高の瞬間”を集めたアルバムに、DTMというページを加えることを僕は夢見てきた。だからBMW M4 DTMで、しかも母国ミサノのレースを戦えることに、とても興奮しているよ。DTMは長きにわたり世界トップ・クラスのカテゴリーで、ドライバーやチームのスキルはF1にも引けを取らないものだと思っている。このチャレンジは、僕のキャリアのなかでも最もタフなもののひとつになるだろうね。」

イェンス・マルクヮルト(BMW Motorsport ディレクター)
「このプロジェクトに快く理解を示してくれたアウディとメルセデス、そして(DTMを運営する)ITRの面々に感謝します。エンジニアたちは現在、BMW M4 DTMをアレックスのリクエストに合わせて仕様変更する作業を進めていますが、そこにはBMWが培ったすべての知識とアイデアが投入されています。DTMのBMWファミリーに、アレックスを迎えるその時を楽しみにしています。」

ゲルハルト・ベルガー(ITR チェアマン)
「DTMのミサノにおけるデビューに際して、アレックスのような素晴らしいアスリートをゲストに迎えられることを光栄に思います。彼の類稀なる才能と努力はスポーツという枠を超え、世界中の何百万という視聴者に感動を与えています。私たちは、ミサノで彼が最高のパフォーマンスを発揮するために、あらゆる協力を惜しみません。アレックス、DTMへようこそ!」

レース1

BMWを覆う雲は晴れず。タイム・アップに苦しんだ予選。

ブダペストは空模様が安定しないまま、6月2日(土)を迎えた。朝のフリー走行は大粒の雨が降りそそぐヘビー・ウェットのセッションとなったが、その後雲は晴れて路面も乾き、ドライ・コンディションでの予選となった。前半、6台のBMW M4 DTMは早々とアタックを仕掛け、次々とタイムを出してゆく。しかしセッション後半になると、他車がタイムを更新するのとは対照的にBMW勢は伸び悩み、徐々にポジションを下げてしまう。終了間際のラスト・アタックでもジャンプ・アップは叶わず。終わってみれば、予選最上位はアウグスト・ファルフスの8番手。10番手になんとかブルーノ・スペングラーが入り意地を見せるが、前戦で今季初の表彰台を獲得したマルコ・ウィットマンは13番手となり、ジョエル・エリクソン、ティモ・グロック、フィリップ・エングが15〜17番手に終わった。全18台が1秒以内に収まる僅差での争いとはいえ、BMWにとっては厳しい予選結果となってしまった。

マシンの不調か、コースとの相性か。活路なく、下位に沈む。

午後になっても天候は崩れず、決勝はドライ・コンディションでのレースとなった。スタートは混乱なく、全車スムーズに1コーナーをクリアしてゆく。予選からの不調を拭いきれていないBMW勢は、規定のピット・ストップを早々に消化する作戦に打って出た。1周目にブルーノ・スペングラーとフィリップ・エング、2周目にティモ・グロックとジョエル・エリクソンをピット・インさせ、さらに6周目にアウグスト・ファルフス、そして唯一序盤にピット・インしなかったマルコ・ウィットマンも17周目にはピット作業を消化し、3メーカーのなかで最も早くすべてのマシンのピット・ストップを終えた。
しかし作戦は功を奏さず、6台のBMW M4 DTMは後方でのレースを余儀なくされる。そのまま淡々と周回を重ね、55分間のレースはフィニッシュ。BMW勢の最上位はスペングラーの12位にとどまり、1台を挟んでその後に残る5台が並ぶという結果に終わってしまった。ドライバーズ・ランキングでもグロックは2位に後退。失意のうちに、レース1は幕を閉じた。

バート・マンペイ(BMW Team RBM チーム代表)
「予選の後、私たちはあらゆることを試し、決勝レースでは大胆な戦略にチャレンジしました。今日できることはすべてやりましたが、残念ながら戦果には繋がりませんでした。今回の結果を分析して、明日のレースにおけるマシンのポテンシャルを向上させるため、ベストを尽くします。」

ブルーノ・スペングラー(No.7 BMW Bank BMW M4 DTM)
「厳しい状況だったけど、僕は前を目指して積極的に攻めた。このレースでなんとかポイントを獲得したかったからね。スタート直後のピット・ストップもその戦略のひとつだったけど、結果としては10位以内でフィニッシュすることはできなかった。残念だよ。」

アウグスト・ファルフス(No.15 Shell BMW M4 DTM)
「今日のレースは、BMWにとって非常にタフだった。レース・ペースも良くなく、描いていた戦略もきちんと遂行できなかった。今はただ、明日のレースがもっと良いものになるよう、願うばかりだよ。」

レース1 決勝結果

12.ブルーノ・スペングラー(カナダ)No.7 / BMW Team RBM
14.ティモ・グロック(ドイツ)No.16 / BMW Team RMR
15.アウグスト・ファルフス(ブラジル)No.15 / BMW Team RMG
16.マルコ・ウィットマン(ドイツ)No.11 / BMW Team RMG
17.ジョエル・エリクソン(スウェーデン)No.47 / BMW Team RBM
18.フィリップ・エング(オーストリア)No.25 / BMW Team RMR

レース2

万事休す。ドライバーたちの奮闘虚しく、最後の戦いへ。

6月3日(日)も空は雲に覆われ、すっきりしない天気が続く。朝のフリー走行では6台が13〜18位と、アウディ、メルセデス両メーカーの後塵を拝してしまうことになったBMW M4 DTM。好転の兆しを見出だせないまま、レース2の予選開始時刻を迎えた。開始9分を過ぎたころ、ティモ・グロックが1分37秒283を記録しトップに立つと、そのままセッションは後半へ。残り5分となり、各マシンがラスト・アタックへと入る。グロックも自らのタイムをさらに0秒178削るアタックを見せるが、他車のタイムが上回り、結果は8番手。メルセデスが予選1〜5番手にずらりと居並ぶなか、これがBMW唯一のトップ10となった。アウグスト・ファルフスが12番手、マルコ・ウィットマンが14番手、フィリップ・エングが15番手と、前日同様の厳しい戦いを予想させる結果となった。

混乱を極めた決勝。フィニッシュ・ラインを駆けぬけた3台のBMW。

スタート前には雲の合間から陽射しも差し込み、乾いた路面でのレース・スタートとなった決勝。前日同様、スムーズな立ち上がりになるかと思われた直後の2コーナー、BMW勢で唯一シングル・グリッドからスタートしたティモ・グロックが他車と接触、スピンしコースアウトしてしまう。グロックは最小限のロスでリカバリーするも、最後尾までポジションを下げてしまった。しかし、これはまだ混乱の始まりに過ぎなかった。
開始5分を過ぎるころ、各マシンのワイパーがいっせいに動き出す。空はいつのまにか厚く暗い雲に覆われ、大粒の雨が激しく落ち始めていた。コースはみるみるうちに濡れ、路面状況はウェットへと変化する。各チームが対応に追われるなか、アクシデントが起きてしまう。強い雨脚によりピット・レーンに水が溜まっていたことが原因で、ルーカス・アウアー(No.22 SILBERPFEIL Energy Mercedes-AMG Motorsport)をはじめブルーノ・スペングラー、エドアルド・モルタラ(No.48 SILBERPFEIL Energy Mercedes-AMG Motorsport)らのマシンがピット・レーンで止まりきれずにオーバー・ランしてしまった。この一連の事故でマーシャル1名が重傷を負い、ヘリコプターで病院へ救急搬送される事態となった。レースはセーフティカー導入の後に赤旗が掲示され、中断となってしまった。
残り28分の時点からセーフティカー・ランのもとでレースが再開されるが、6位のフィリップ・エングを筆頭に、マルコ・ウィットマン、ティモ・グロックと、3台のBMW M4 DTMが連なっていた。さらにピット・ストップを終えている彼らに対し、前を走る5台のマシンはいずれもピット・ストップを終えていない。そして、激しく降り注いだ雨は赤旗中断のあいだにやみ、雲の切れ間からは太陽が顔を覗かせている。BMWの勝利へのシナリオは、ここから始まった。
セーフティカーがピットへと戻りバトルが再燃すると、ウィットマンがエングをパスして実質のトップへ。その後グロックもエングをかわし、BMWの1-2-3体制でレースが進む。再開後は前半の混乱が嘘のように順調なレース展開となり、終盤にエングが後続のマシンに迫られるシーンもあったものの、3台とも危なげのない走りでフィニッシュ。この日の予選に至るまでの不調を払拭する、BMW M4 DTMによるポディウム独占という結果で、波乱のブタペスト・ラウンドを終えた。
なお、ピット・レーンで事故を起こしたアウアー、モルタラ、そしてスペングラーの3台に対しては、レース後に失格の裁定が為された。

ステファン・ラインホルト(BMW Team RMG チーム代表)
「私たちはこの勝利を、今日のレース中に負傷されたすべての方々に捧げたいと思います。そして、彼らの一日も早い回復を祈っています。一方で、昨日からの努力が今日報われたことを喜ばしく思います。状況が少しでも違っていたら、おそらく我々ではない誰かが優勝していたでしょう。ともかく、私たちにとって素晴らしい結果となったことに、間違いはありません。」

マルコ・ウィットマン(No.11 BMW Driving Experience M4 DTM)
「ピット・レーンはとても滑りやすくなっていて、実は僕もわずかに進み過ぎてしまったんだ。重大なアクシデントがあったから、勝利を素直には喜べない。彼らの無事を心から願っている。レースは、ピット・ストップのタイミングが絶妙だった。その後の中断と再会も、僕たちに味方したね。14番グリッドからのスタートで25ポイントを獲得するなんて、昨日の結果からは想像できない。アンビリーバブルだよ。」

ティモ・グロック(No.16 DEUTSCHE POST BMW M4 DTM)
「1周目でスピンしてしまい、最後尾になってしまった。だからいち早くピットへと向かったんだ。その後雨に見舞われたけど、正直、僕らはこの展開はまったく予想してなかった。そして、事故が起こってしまった。重傷を負ったマーシャルは、ボランティアとしてこのレースに参加していたひとりのモータースポーツ・ファンなんだ。彼、そして巻き込まれたすべての人たちが、一刻も早く回復してくれることを望むよ。本当に痛ましい出来事だった。」

レース2 決勝結果

1.マルコ・ウィットマン(ドイツ)No.11 / BMW Team RMG
2.ティモ・グロック(ドイツ)No.16 / BMW Team RMR
3.フィリップ・エング(オーストリア)No.25 / BMW Team RMR
6.ジョエル・エリクソン(スウェーデン)No.47 / BMW Team RBM
7.アウグスト・ファルフス(ブラジル)No.15 / BMW Team RMG
-.ブルーノ・スペングラー(カナダ)No.7 / BMW Team RBM

流れを覆し、勝利をつかんだ第3戦。次戦では完勝を目指す。

すべてのマシンが下位に沈んだレース1から、波乱の連続となったレース2で表彰台を独占。まさに劇的な展開となったブダペストでの週末を終え、シリーズは再びドイツ国内へと戻る。次戦の舞台はニュルンベルクの公道コース、ノリスリンク。昨年はレース1・2ともにBMWが連勝を遂げている、相性の良いコースだ。2年連続の勝利をかけた戦いは、6月23日(土)・24日(日)に開催される。