DTM
Round 5 Zandvoort

DTM第5戦、ザントフォールト。
すっきりしない週末。今季初のノー・ポディウムに終わる。

ここは、幾度も攻めたコース。ルーキーの表情は落ち着きに満ちていた。

海と太陽、そしてモータースポーツ。北海に面したオランダのビーチ・リゾート、ザントフォールト。この街で最初に自動車レースが開催されたのは1939年のこと。1948年には、海岸から目と鼻の先の砂丘の上にレーシング・コースが完成し、オランダを代表する高速サーキットとしてF1グランプリをはじめとする数々のレースが行われてきた。1990年の改修により中速域のテクニカル・コースへと変貌を遂げた後も、ザントフォールトは古き良きサーキットの面影を色濃く残している。
今シーズンからBMWファミリーに加入したフィリップ・エング。ここまで3度の表彰台と1度のポール・ポジション(そして1000分の数秒差に泣いた、2度の2番手)と、ルーキーらしからぬ活躍を見せている。ザントフォールトでのレースに向けて、彼は次のように語っている。「このコースを走ることにワクワクしているよ。過去に多くの成功を得てきたからね。特に2015年のワンメイク・カップではポール・ポジションとファステスト・ラップ、そして優勝とパーフェクトな結果を残せたんだ。しかも2レース連続で。もちろんここをBMW M4 DTMで走るのは初めてだけど、高速・中速のコーナーは僕らのマシンにフィットしていると思う。予選は特に重要だよ。ザントフォールトは、追い抜きのとても難しいコースだから。」ジュニア・フォーミュラ時代から慣れ親しんできたサーキットのひとつで、エングがどのような走りを見せるのか、注目したい。

レース1

あと少し、何かが足りない。どのマシンも決め手を欠いた予選。

7月14日(土)、ザントフォールトは快晴。海からの心地よい風が吹き寄せるなか、レース1の予選が始まった。金曜日とこの日のフリー走行では、アウディ、メルセデス両陣営の後塵を拝することが多かったBMW勢。不安を抱えるなか、セッションはスタートしていった。
開始から5分30秒、最初にタイムを出したのはティモ・グロックだった。1分31秒217で3番手タイム。続いて前戦からの連勝と、4戦連続の表彰台を狙うマルコ・ウィットマンが1分31秒337を記録し、グロックに続く。アウグスト・ファルフスも1分31秒469のタイムを出し、グロック、ウィットマン、ファルフスが4・5・6番手に位置する形でセッション前半を終え、各マシンとも一旦ピットへと戻った。残り6分を切る頃からセッション後半、ラスト・アタックが始まってゆくが、上位陣はタイム・アップならず。トップ4はまたもやメルセデスが独占。その後ろにグロックとウィットマンが5・6番手と、ドライバーズ・ランキングを争うふたりが辛うじて食らいつく。間に3台のアウディを挟み、ファルフスは最終的に10番手に。ここまでがトップ10。ブルーノ・スペングラーとフィリップ・エングは消化不良の12・13番手、ジョエル・エリクソンは16番手で、レース1の予選を終えた。

ジョエル・エリクソンが7台をパス。トップ10に4台が入賞。

陽射しが一段と強くなるなか、レース1の決勝がスタートを迎える。各マシンがグリッドに着き、シグナルはブラックアウト。55分間の戦いが幕を開けた。グロックとウィットマンの2台は序盤から苦しい展開。後方のマシンにオーバー・テイクを許し、2周目までにそれぞれひとつずつポジションを落としてしまう。3周目の終わりにウィットマンがピットへと向かうと、翌周にはグロックもピット・イン。流れを変えようと、2台は早めのピットを選んだのだ。一方、5周目にピット・インしたファルフスは、タイミングのあやでジャンプ・アップに成功。グロック、ウィットマンの後ろにつく形でレースを進める。
残り26分となった19周目、上位を争うマシンがコーナーを曲がりきれずタイヤ・バリアにヒット。SC(セーフティカー)が導入されるが、事故車両の撤去に時間を要し、残り12分を切る段階までSC先導による走行が続いた。26周目にSCはピットへと戻り、各車両の差がほとんどないなかでのローリング・スタートとなった。このスタートをうまく利用し、ファルフスとエリクソンはそれぞれひとつずつポジションを上げた。16番手スタートからじりじりと順位を上げてきたエリクソンは、前を行くマシンをさらにもう1台攻略し、グロック、ウィットマン、ファルフス、エリクソンの4台が実質6〜9位の位置で一団となって走行。レースはそのまま規定の55分を迎えフィニッシュ。BMW M4 DTMは4台が入賞を果たした。予選から調子の上がらなかったスペングラーは12位、エングは14位でレース1を終えた。

ルドルフ・ディットリッヒ(BMW Motorsport)
「今日、我々のマシンのうち4台がトップ10に入ったことは、チームとしての確かな実績と言えます。しかし全体としては、今日のレースはメルセデスに分があったようです。その勝利に賛辞を送ります。我々はこれから明日に向け、その差を埋めることに努めます。」

ティモ・グロック(No.16 DEUTSCHE POST BMW M4 DTM)
「全体的には自分のリズムで戦うことができたので、それほど難しいレースではなかったよ。ただ、スタートでロビン(・フラインス)が自分をオーバー・テイクしようとしているのを見過ごしてしまったのは痛いミスだった。セーフティカー後のリスタートで再びエキサイティングな状況になったけど、その後は驚くほどメルセデスが強く、アウディの調子も良さそうだった。僕らは明日までにもっと努力しないといけないね。」

ジョエル・エリクソン(No.47 BMW M4 DTM)
「普段なら9位というのは到底満足できないリザルトだけど、今日はとてもうれしいよ。15番グリッドからスタートして、ポイント圏内でフィニッシュできた。追い抜きの難しいこのザントフォールトでね。素晴らしいことだと思う。ピット作業もパーフェクトだったよ。」

レース1 決勝結果

6. ティモ・グロック(ドイツ)No.16 / BMW Team RMR
7. マルコ・ウィットマン(ドイツ)No.11 / BMW Team RMG
8. アウグスト・ファルフス(ブラジル)No.15 / BMW Team RMG
9. ジョエル・エリクソン(スウェーデン)No.47 / BMW Team RBM
12. ブルーノ・スペングラー(カナダ)No.7 / BMW Team RBM
14. フィリップ・エング(オーストリア)No.25 / BMW Team RMR

レース2

照りつける太陽の下、エングが意地を見せフロント・ローを獲得。

7月15日(日)も、青空に太陽が輝く、夏のリゾート地らしい爽快な天候となった。予選セッションがスタートするが、朝のフリー走行でコースアウトを喫し、勢い余って側面からガードレールに接触してしまったジョエル・エリクソンのマシンはガレージ内に収まったまま。メカニックたちはコースへ送り出そうと、懸命に修復作業を続ける。そんななか、最初にタイムを出したのはブルーノ・スペングラー。開始5分を過ぎた頃に1分30秒908を記録し、セッションをリードする。そのタイムを塗り替えたのはフィリップ・エング。1分30秒671。前日のレースで苦しんだふたりが、その鬱憤を晴らすかのように好タイムを記録してゆく。その後も大きな混乱はなく予選は進行。残り5分、ギリギリのタイミングで修復を終えたエリクソンのマシンがコースへ。エリクソンは果敢な走りでアタックに入り、終了間際に14番手のタイムを記録。無事に予選を終えた。
エングは最終的に2番手となりフロント・ローを獲得。7番手にスペングラー、8番手にアウグスト・ファルフスが続く。マルコ・ウィットマンは12番手、ティモ・グロックは17番手と、ドライバーズ・ランキングを争う両者にとっては厳しい予選結果となってしまった。

随所で速さを見せながらも、表彰台へは届かず。苦杯を喫した日曜日。

午後1時30分、ザントフォールトでのレース2はスタートを迎えた。混乱のないスムーズなスタートで1コーナーをクリアすると、各マシンは隊列を作りながら周回を重ねてゆく。フロント・ローからスタートしたエングはペースを上げられず、後続のマシンに攻め立てられながらも2位を死守する。一方予選で17番手に沈んだグロックは4周目の終わりに早めのピット・インを選択し、レース後半のチャンスを狙う作戦に出た。9周目、ポジションを守りきったエングはピットへ。しかしピット作業のタイミングにより、コースに復帰する際には実質順位で2つポジションを下げてしまう。
残り25分を切った20周目、ファルフスが気を吐く走りを見せる。S字コーナーで前方2台のバトルへと割って入り、そのまま両マシンをパス。一気に2つポジションを上げると、さらに前を追ってゆく。21周目、スペングラーが1コーナーで他車と接触しスピン。グラベルに捕まり身動きがとれなくなってしまったため、SCが導入される。スペングラーのマシンはマーシャルの手によってコースへと復帰したものの、最後尾までポジションを下げてしまった。このSC中にグロックは再度ピット・イン。タイヤをフレッシュなものへと変え、賭けに出た。
24周目にSCがコース外へ。残り17分、レース1と同じく、ほとんど差がないなかでリスタートが切られる。ファルフスはこのタイミングを利用しさらに1台を攻略、5位へとポジションを上げる。一方後方では団子状態の混乱を利用し、グロックがジャンプ・アップ。一方でウィットマンはマシンを傷つけてしまい、左フロント・タイヤがスロー・パンクチャーを起こし後退を余儀なくされる。
追い越しの難しいザントフォールト故に、その後も各所でバトルが勃発するも、大きな混乱はなくそのままレースは55分を経過しフィニッシュ。エングとファルフスが4位・5位に入り、終盤目覚ましい追い上げを見せたグロックが10位に滑り込んだ。11位にエリクソン、13位にスペングラー。最後にタイヤ・トラブルを抱えたウィットマンは17位でレースを終えた。

マルコ・ウィットマン(No.11 BMW Driving Experience M4 DTM)
「12番グリッドという難しい位置からのスタートだったけど、良いスタートを切ることができたし、ポイント圏内へ上り詰めることも十分に可能なはずだった。でもリスタートの混乱のなかで他のマシンともつれ合う格好になり、結果として僕のマシンはスロー・パンクチャーに見舞われてしまった。残念だよ。」

アウグスト・ファルフス(No.15 Shell BMW M4 DTM)
「今日は文字どおり激しいレースだった。より上位でレースをフィニッシュする可能性があったと思うと、予選でミスを犯してしまったのが悔やまれるよ。でも、最終的に5位となりポイントを獲得できたことは、次のレースに向けて弾みをつける意味でも良かったと思うよ。」

フィリップ・エング(No.25 SAMSUNG BMW M4 DTM)
「予選で2番グリッドを得られたのは最高だった。スタートからも順調で、特にセーフティカーが入ったあとのペースはとても良かった。僕のマシンは力強く、ドライビング・レスポンスも最後まで実に快適だったよ。」

レース2 決勝結果

4. フィリップ・エング(オーストリア)No.25 / BMW Team RMR
5. アウグスト・ファルフス(ブラジル)No.15 / BMW Team RMG
10. ティモ・グロック(ドイツ)No.16 / BMW Team RMR
11. ジョエル・エリクソン(スウェーデン)No.47 / BMW Team RBM
13. ブルーノ・スペングラー(カナダ)No.7 / BMW Team RBM
17. マルコ・ウィットマン(ドイツ)No.11 / BMW Team RMG

オランダからイギリスへ。オールド・サーキットの旅は続く。

前戦ノリスリンクからは一転、2レースともにポディウムへと手が届かなかったザントフォールトの週末。グロック、ウィットマンともにドライバーズ・ランキングで3・4位のポジションは維持したものの、ライバルとの差は開いてしまった。勝ちきれなかったその悔しさを、各ドライバーとも次戦の糧としたい。第6戦は海を越えイギリスへ。由緒あるテクニカル・コース、ブランズ・ハッチに戦いの舞台を移す。8月11日(土・祝)・12日(日)、イングランドの空に、BMW M4 DTMのエキゾースト・ノートが響き渡る。