SUPER GT
GT300 Class
Round 5 FUJI GT 500mile RACE

SUPER GT第5戦、富士500マイル。
ARTA BMW M6 GT3、驚嘆のペースで記録的な勝利。

タイでの雪辱を晴らすために。舞台は整い、役者はそろった。

8月4日(土)、SUPER GT第5戦富士ラウンドが始まった。この夏は日本列島全体が異常とも言える暑さに見舞われているが、最高地点の標高が585mと平野部より高い富士スピードウェイにおいてもその影響は拭えず、午前8時40分の公式練習開始時で既に気温28度、路面温度35度を記録していた。前戦タイでエアコンのトラブルが発生したARTA BMW M6 GT3にとっては気がかりなコンディションとなったが、公式練習ではそんな心配を払拭する快走を見せ、常にトップを争うタイムを記録。エアコンも完璧に作動し、ドライバー陣からのインプレッションも上々だった。
チームは2017年の第5戦、そして今年の第2戦と富士スピードウェイでの戦いで2連勝している。同じ車両、同じドライバーでの同一サーキット3連勝という前人未到の記録とともに、高木真一選手のSUPER GT最多勝記録更新がかかるこのレース。さらに500マイル(約807km)といった長丁場のため、他のレースよりポイントも多く付与される重要なラウンドだが、大本命と目されているがゆえに他のチームからのマークも厳しくなることが予想される。予選に向け、気温とともにチームのボルテージはじりじりと上昇していった。

連続ポールはならず。上出来ながらも悔しいフロント・ロー。

午後2時35分、Q1の幕が上がる。路面を照らす陽射しは強さを増し、気温は31度、路面温度は44度にまで上昇していた。アタックを担当するのはショーン・ウォーキンショー選手。10分間の予選開始とともにコース・インすると、52kgのハンディ・ウェイトを積んでいるとは思えないほど、走り出しから好タイムを記録。ショーン選手はタイヤに熱を入れながら、コーナーを攻めるリズムを研ぎ澄ませてゆく。セッションが残り5分を切る頃から各車が続々とアタック。ショーン選手も一旦はトップ・タイムを記録したが、その後に他車もタイム・アップ。途中まで自己ベストを記録していたラップでわずかにミスをしてしまったことが響き、最終的には1分38秒143を記録し4番手となった。しかし、危なげなくQ1を突破。バトンを高木選手へとつないだ。
GT300クラスのQ2は午後3時20分にスタート。路面温度が1度下がったとはいえ、Q1とほぼ変わらないコンディション。マシンやタイヤ、そしてドライバーにも厳しい環境下での戦いが続く。高木選手の駆るARTA BMW M6 GT3は順調な立ち上がりからトップ・タイムを記録するが、その後に他車のリードを許す。終盤、ストレートが速いマシンの特性を生かしコースを限界まで攻めるも、1分37秒326で2番手タイム。トップのマシンとはわずか0秒014の差で、富士スピードウェイでの2戦連続ポール・ポジションは叶わなかった。しかし、明日の決勝はフロント・ローからのスタート。有利な展開に持ち込めば、勝機は十二分にある。

ショーン・ウォーキンショー選手コメント:
「Q1はセクター3でミスをしてしまいましたが、4番手で突破できました。Q2では高木サンが素晴らしい仕事をしてくれたので、フロント・ローからスタートを切ることができます。明日はレースの距離が長いので、ミスをしないよう走りきりたいです。」

高木真一選手コメント:
「相変わらずココ(富士)でのM6の調子は素晴らしく、ショーンからのQ1のインプレッションをもとにセットを変更したら、さらに良くなりました。監督からは37秒台を狙うよう言われました。なんとか目標はクリアできましたが、ポールまでは手が届きませんでした。しかし、クルマは非常に順調なので、2番手というポジションを無駄にしないよう、しっかりと戦いたいです。」

安藤博之エンジニアコメント:
「第2戦のセットをベースに、改善できるところをアジャストして臨みました。温度が上がったことでいろいろと変化が生じてしまいましたが、セットの変更によるマシンの反応は良かったので、徐々にパフォーマンスは向上していきました。午前のセッションでタイヤを上手く合わせ込むことができたのも大きいと思います。明日は長距離なので、どんな状況にも対応できるように準備したいと思います。」

ノー・トラブルの勝利。全車を周回遅れにして、GT300クラスを制圧。

今回の500マイルレースでは、各マシンに最低4回のピット・ストップが義務付けられている。しかし、GT300クラスのマシンのパフォーマンスでは、計算上500マイルは3回のピット・ストップで走りきれてしまう。この残る1回の余分なピット・ストップをどのように処理するか、チームにより戦略が分かれることが予想された。シチュエーションによっては、その戦略が勝利を左右するかもしれない。一筋縄ではいかない長距離レース。8月5日(日)午後1時30分、路面温度が47度に達するコンディションのなか、決勝はスタートを迎えた。
オープニング・ラップの1コーナー、ストレート・スピードに勝るARTA BMW M6 GT3は先頭に並びかけるも無理はせず、スタート・ドライバーの高木選手はトップのマシンの後ろにピタリとついたまま周回を重ねる。1周目から規定回数消化のためのピット・ストップをこなすマシンが出るなか、ARTA BMW M6 GT3は500マイルを均等に割ったスティントでレースを進めていく戦略をとった。8周目、スタートから機を窺っていた高木選手が1コーナーで前を行くマシンをパス。そうなるのが必然であったかのように、悠々と奪首してみせた。後から振り返れば、これがARTA BMW M6 GT3にとって、このレース唯一の魅せ場であったかもしれない。
後方にマージンを築きながら安定したペースで周回を重ねる高木選手であったが、車中では常にライバルのタイムを、無線を通じて確認していた。マシンをできる限り労わりながら走るため、細心の注意を払いながらの走行を続け、30周目にルーティンのピット・イン。交代したショーン選手は10番手でコースへと復帰するが、前を行く他車もルーティンのピットへと入り、41周目にはふたたびトップへと返り咲く。2位のマシンに対して大きくリードしながらも、ショーン選手は手綱を緩めることなく攻め続ける。66周目に2回目のピット・ストップ。十分なリードを稼いでいたため、高木選手はトップのままでコースへと復帰する理想的な展開を現実のものとした。その後はまさに横綱相撲。101周目と131周目にそれぞれピット・ストップを行い規定回数をクリア。終盤にコースの一部で雨が落ちたりもしたが大きな混乱はなく、ARTA BMW M6 GT3は高木選手のドライブで、164周目、500マイルレースのチェッカーを受けた。
気がつけば、2位に1周以上の差をつける圧倒的な勝利。そして高木選手にとっては第2戦富士で更新した自身の持つSUPER GT最多勝記録をふたたび更新する通算20勝目。そしてSUPER GT史上初となる、同じ車両、同じドライバーによる同一サーキット3連勝を達成。記録にも記憶にも残る、メモリアルな夏の夜となった。

ショーン・ウォーキンショー選手コメント:
「非常に素晴らしいレースでした。高木サンが最初に良いペースで大きなギャップを作ってくれましたし、そのあとのコンディションに応じてタイヤのコンパウンドも変えたので、レースを通じてとても良いパフォーマンスを発揮できたと思います。」

高木真一選手コメント:
「富士は本当にM6との相性が良いのですが、それでも前回のタイでウェイトを積んでいたら、今日の結果はなかったと思います。ここで勝つことを目標に、みんなで力を合わせてやってきました。実際のところ、なかなかそういう努力は実を結ばないものなのですが、今回、ここまで上手くいくとは思っていませんでした。トラブルのないマシンを仕上げてくれたチームに感謝です。」

土屋圭市エグゼクティブ・アドバイザーコメント:
「エンジニアもメカニックも、そしてドライバーも全員が非常に良いパフォーマンスを発揮ししてくれて、この結果につながったと思う。大量のポイントを獲得できて本当にうれしいよ。次戦はウェイトが加算され厳しい戦いになるけど、チャンピオンシップを有利に進めていきたいね。」

タイトル獲得に向け大きな一歩。確かな自信とともに、次なる舞台へ。

大きなプレッシャーをはねのけ、見事ポディウムの頂点へと立った高木選手とショーン選手。チャンピオンシップでもドライバー・ランキングで一躍トップへと躍り出た。そしてBMW M6 GT3を擁するARTAも、GT300チーム・ランキングの首位を走っている。残り3戦。タイトルを狙う上でも、一戦一戦落とせないラウンドが続く。次戦はアップダウンに富んだ東北のテクニカルサーキット、スポーツランドSUGO。毎年波乱を呼ぶレース展開となることの多いSUGOラウンドで、ARTA BMW M6 GT3がいかなる走りを見せるのか。9月15日(土)・16日(日)、戦いの火蓋が切られる。