DTM
Round 6 Brands Hatch

DTM第6戦、ブランズ・ハッチ。
アウグスト・ファルフス、今季初の2位表彰台を獲得。

伝統のスパ24時間。BMW M6 GT3が歴史に残る1-2フィニッシュ。

7月28日(土)。ベルギー、アルデンヌの森に位置するスパ・フランコルシャン・サーキットには、総勢221名のドライバーと63台のレーシング・マシンの姿があった。そのなかにはDTMドライバーであるマルコ・ウィットマンやフィリップ・エング、そして4台のBMW M6 GT3も含まれている。1924年から続く伝統のスパ24時間レースが、今年も始まろうとしていた。
18時30分、24時間後のゴールを目指して、戦いの火蓋が切られた。レースは序盤からFCY(フル・コース・イエロー)が断続的に導入される荒れた展開を見せ、アウディやアストン・マーティン、ベントレーなどがしのぎを削るなかで総合首位も頻繁に入れ替わる。誰もが安定的なリードを築けず混沌としたままレースは進んでいく。日付が変わった深夜3時過ぎの大きなクラッシュにより赤旗が提示され、レースは1時間以上に渡り中断。残り時間が13時間弱となった頃にレースは再開する。この段階で首位に立っていたのが、No.34 Walkenhorst MotorsportのBMW M6 GT3(T.ブロンクビスト、C.クローンズ、P.エング)であった。2位のマシンとの差は僅かとはいえ、No.34はトップを守ったままナイト・セッションを走りぬく。そして夜が明ける頃には、No.99 ROWE Racing(A.シムス、J.クリングマン、N.キャッツバーグ)のBMW M6 GT3も上位へと進出。以降、No.34とNo.99がピットのたびに首位を入れ替える形でレースをリードしてゆく。
終盤になると、序盤の荒れ模様が嘘だったかのように粛々と周回を重ねる展開に。最後はフィリップ・エングのドライブするNo.34が約10秒後方にNo.99を従える形で511周を走破。70回目を迎えたスパ24時間レースにおいて、1-2フィニッシュという偉業を達成した。

レース1

経験か、勢いか。ベテランと新鋭のつば迫り合いが予選を沸かせる。

ベルギーでの偉業から2週間後。その興奮も冷めやらぬなか、DTMはイギリスへと上陸。第6戦は、2013年以来の開催となるブランズ・ハッチでのレースとなる。8月11日(土・祝)の朝に行われた2回のフリー走行では、アウグスト・ファルフスが総合トップのタイムを記録。スパ24時間レースからの良い流れを感じさせつつ、レース1の予選を迎えた。
開始から3分。フリー走行からの好調を維持するファルフスが、マシンをウォーム・アップさせながら1分22秒072のタイムを記録。翌周には自己の記録を1分18秒707と更新した。直後、スパ24時間ウィナーとなったフィリップ・エングが、その余勢を駆り1分18秒676を記録。しかし次の周で、ファルフスは負けじと1分18秒505を叩き出す。2台のBMW M4 DTMによる0.1秒以下の争いが、セッション前半を彩った。その後全車は一旦ピット・イン。残り6分を切ったところで再度コースへとマシンが戻りはじめ、ふたたびセッションが動き出す。各車ラスト・アタックへと向かうなか、エングとファルフスはともにタイム・アップを果たし自己ベストを更新。しかし最終的には4・5番手に留まった。ティモ・グロックは一時4番手のタイムを出すも、最後のアタック・ラップで攻めすぎたのかスピンを喫しコースアウトしてしまい、タイムを更新できず。結果7番手に終わった。マルコ・ウィットマンが9番手、ジョエル・エリクソンは16番手、ブルーノ・スペングラーは18番手。トップ10に4台のBMW M4 DTMが入る結果となった。

苦しんだ日々は今日、報われた。ファルフス、2年ぶり13回目の表彰台。

路面全体がピット方向に大きく傾斜しているブランズ・ハッチのホーム・ストレートに、18台のDTMマシンが整列。1周のウォーム・アップ・ランの後、55分間のレース1決勝がスタートした。スタートでファルフスはエングをパスし一旦は前に出るが、エングも盛り返しBMW同士のサイド・バイ・サイドのバトルを展開。ポジションをひとつ上げたグロックもその後ろで前をうかがうなか、ファルフスが競り勝ちエングの前へと出て、4位へと浮上する。オープニング・ラップではグロックとスペングラーを含む6台が一斉にピット・イン。これによりファルフスとエングは3・4番手で1周目を終えた。ウィットマンは2周目にピットへ。この直後にアウディのマシンが2コーナーでコースアウトしたため、マシンの処理終了までスロー・ゾーンが設定されてしまう。この規制が解除された5周目、ファルフスとエングはそろってピットへと向かう。ファルフスはポジションをキープしたままコースへと復帰。BMW陣営はレース開始10分で、エリクソンを除く5台について早々に規定のピットを消化させる作戦を選んだ。
9周目、トップを走るルーカス・アウアー(No.22 SILBERPFEIL Energy Mercedes-AMG Motorsport)がピットへ。コースへと復帰するも、先んじてピット・ストップを済ませていた後続の猛追を振り切ることができず、アウト・ラップでトップを譲ると、そのすぐ後ろを走っていたファルフスにもオーバー・テイクを許し、アウアーは2つポジションをダウン。これによりファルフスは実質2位へ浮上。なおもコンマ数秒の差でトップの背後にかじりつくも、周回を重ねるごとに少しずつ引き離されていってしまう。15周目にすべてのマシンがピット・ストップを終えると、上位は膠着状態のままレースは進行。終盤を迎えても状況に大きな変化はなく、40周目に規定の55分を経過。ファルフスは2位でフィニッシュし、2016年開幕戦のホッケンハイム以来となる表彰台を獲得した。ファイナル・ラップまで続いたゲイリー・パフェット(No.2 Mercedes-AMG Motorsport PETRONAS)との接近戦を凌ぎ切ったエングは5位、ウィットマンは9位に入賞しポイントを積み増した。グロック、エリクソンは13・14位、スペングラーは17位という結果となった。

ステファン・ラインホルト(BMW Team RMG チーム代表)
「私たちのチームにとって通算40回目となる表彰台をアウグストが獲得してくれました。これは素晴らしいことです。明日のレースだけでなく、優勝のチャンスはまだチームの全員にあります。残りのシーズンを通じて、我々はこれからもチャレンジを続けてゆきます。」

フィリップ・エング(No.25 SAMSUNG BMW M4 DTM)
「オープニング・ラップでのアウグストとの一騎打ちはとてもスリリングだった。その後は落ち着いた展開のレースだった。最後の最後、ゲイリー(・パフェット)が背後に迫ってきた時を除いてはね。予選の結果には満足しているけど、レース中のペースにはまだまだ改善の余地があると思う。そこを如何に良くするかが、明日のポイントかな。」

アウグスト・ファルフス(No.15 Shell BMW M4 DTM)
「2016年以来の表彰台、格別だよ。長い道のりだったけど、こうやって再びポディウムに登ることができて、感無量だね。今日のクルマのペースはとても良かった。素晴らしい仕事をしてくれたチームのみんなに、心から感謝したいと思う。」

レース1 決勝結果

2. アウグスト・ファルフス(ブラジル)No.15 / BMW Team RMG
5. フィリップ・エング(オーストリア)No.25 / BMW Team RMR
9. マルコ・ウィットマン(ドイツ)No.11 / BMW Team RMG
13. ティモ・グロック(ドイツ)No.16 / BMW Team RMR
14. ジョエル・エリクソン(スウェーデン)No.47 / BMW Team RBM
17. ブルーノ・スペングラー(カナダ)No.7 / BMW Team RBM

レース2

好調のファルフスをもってしても7番手。ラスト・アタックで伸び悩む。

8月12日(日)、ブランズ・ハッチの空はどんよりとした曇り。各チームは天気予報や雨雲レーダーを確認しながらの戦いを余儀なくされた。厚い雲に覆われた空の下、レース2の予選がスタート。開始5分を過ぎる頃、BMW勢が立て続けに好タイムをマーク。アウグスト・ファルフス、マルコ・ウィットマン、ティモ・グロックが上位3台を占める。他車のタイム・アップもあったものの、セッション前半をファルフスは2番手、ウィットマンとグロックは4・5番手につける。セッション残り6分、ピットへと下がっていたマシンがコースへと戻りはじめ、決勝に向けての最後のアタックがスタートしてゆく。残り1分を切るタイミングでファルフス、ウィットマン、グロックはそれぞれ自己ベストを更新するもトップには及ばず。逆に他のマシンにタイムで上回られ、ポジションを落としてしまう。残り30秒のタイミングでフィリップ・エングがトップ10圏内にジャンプ・アップするも、そこまで。BMW勢最上位はファルフスの7番手。9番手のウィットマン、10番手のエングまでがトップ10。グロックは最終的に13番手となり、苦しむジョエル・エリクソンとブルーノ・スペングラーは前日の予選と同様16番手と18番手に沈んでしまった。

好事魔多し。運も天候も味方せず、ノー・ポディウムに終わる。

風が強まり、いつ雨が落ちてきてもおかしくない空模様で迎えた決勝。グリッド上にマシンを並べた後にポツリポツリと水滴が落ちてくる場面もあったが、結局本格的な雨とはならず。チームとドライバーに不安を残したまま、複雑なコンディションのなかでレース2の決勝はスタートした。
立ち上がりでウィットマンは1台をパス。そのまま隊列が3コーナーへと差し掛かったところで、5位のマシンがスピンし、6位のマシンを巻き込むようにしながらコースアウト。7位を走っていたファルフスは、スタート直後ゆえに間隔のない状態で連なっていたため避けきれず、スピンアウトしてゆくマシンの後部に追突。左フロントに重大なダメージを負ってしまう。ファルフスのすぐ後ろを走行していたウィットマンは、間一髪で難を逃れる格好となった。このアクシデントによりSC(セーフティカー)が導入され、隊列を組み直し4周目にリスタート。ファルフスはここでもピットへと入らずレースを継続するが、左のヘッドライトが失われたうえにホイール・アーチ付近のカウルもめくれ上がってしまい、空力的にも戦闘力が削がれているためか、リスタートの際にズルズルとポジションを落としていってしまった。4台ほどに抜かれたところでなんとか踏みとどまるも、今度はペースの上がらないファルフスのマシンを先頭に、後続が数珠繋ぎとなる展開となってしまう。
5周目に、ウィットマンとスペングラーを含む5台のマシンがピット・イン。6周目にはグロック、7周目にはエングもピット・インし、ともにタイヤはスリックのままコースへと復帰する。エングと同時にピットへと向かったファルフスは、破損個所の応急処置を試みるため長時間のストップを余儀なくされる。唯一ピットを先延ばししたエリクソンは、雨が降り始めるわずかな可能性に賭け待ち続けるも、ついに20周目にピットへ。結局スリックを選択し、コースへと戻った。同じタイミングで、応急処置後に手負いながら懸命に走り続けたファルフスはマシンをガレージへと入れ、レースを終えた。1周目のアクシデントに絡んだ3台のマシンのうち、唯一彼のみがリタイアという結果に終わってしまったのは残酷な悲運としか言いようがない。昨日とは打って変わって、失意のなかでファルフスのブランズ・ハッチは幕を閉じた。
最後まで雨を待ち続けたジェイミー・グリーン(No.53 Audi Sport Team Rosberg)も、レースが残り約10分となった31周目にピット・イン。人々を惑わせ続けた雨は、遂に降ることはなかった。最後まで番狂わせはなく、レースはそのままフィニッシュ。終盤、2013年のDTM王者であるマイク・ロッケンフェラー(No.99 Audi Sport Team Phoenix)とのチャンピオン経験者同士による息詰まるバトルを制したウィットマンが5位、エングが7位となり、ともに連続入賞を果たした。一方、グロックは入賞にあと一歩届かぬ11位となり、2戦連続のノー・ポイント。ドライバーズ・ランキングでも5位へと後退してしまった。エリクソンとスペングラーは13・14位。速さを発揮できぬまま、このラウンドを終えた。

ルドルフ・ディットリッヒ(BMW Motorsport)
「波乱に満ちたレースでした。雨が降るとシミュレーションしていましたが確信はできず、ご存知の通り、結果として雨は降りませんでした。マルコとフィリップがポイントを獲得したことは良い結果でした。一方でアウグストのリタイアは残念でした。彼に非はまったくなく、あのアクシデントがなければ結果は違ったものになっていたはずです。次戦ミサノは未知の領域です。勝利に向け、たゆみなく準備を進めてゆきます。」

マルコ・ウィットマン(No.11 BMW Driving Experience M4 DTM)
「この週末をトータルに見て、特に予選の結果が物語っているように、正直なところ我々はメルセデスのペースについてはいけなかった。でもその状況下で、できうる限りのことはできたと思う。1周目のアクシデントも運良く回避できて… あれは本当に危なかったよ。なにより今回はピット・ストップがとてもスムーズだった。クルーの見事な働きぶりには本当に感謝している。5位は予想以上の結果だったから、満足しているよ。」

アウグスト・ファルフス(No.15 Shell BMW M4 DTM)
「前方で競り合いながら接触したのはルーカス(・アウアー)とロビン(・フラインス)で、僕はどうすることもできないまま巻き込まれてしまった。ダメージを負ったマシンで走りながら、雨が降って一発逆転できるチャンスを願っていたけど、神様は味方をしてくれなかった。今回のレースはただただ残念だよ。仕方のないことだけどね。」

レース2 決勝結果

5. マルコ・ウィットマン(ドイツ)No.11 / BMW Team RMG
7. フィリップ・エング(オーストリア)No.25 / BMW Team RMR
11. ティモ・グロック(ドイツ)No.16 / BMW Team RMR
13. ジョエル・エリクソン(スウェーデン)No.47 / BMW Team RBM
14. ブルーノ・スペングラー(カナダ)No.7 / BMW Team RBM
-. アウグスト・ファルフス(ブラジル)No.15 / BMW Team RMG

次戦。未知なるパフォーマンスが、夜のサーキットに轟く。

上昇への機運はあったものの歯車が上手く噛み合わず、DTMブランズ・ハッチでのBMW初勝利はお預けとなってしまった。次戦はDTM初開催となるミサノ・ラウンド。シリーズ初のナイト・レースとして行われるラウンドには、スペシャル・ゲスト・ドライバーが参戦を予定している。アレックス・ザナルディ。第3戦ブダペストでの発表以降、ザナルディは手でアクセル/ブレーキの操作をできるようにした特別仕様のBMW M4 DTMの開発現場に立ち会い、幾度ものテストをこなしている。準備は、着々と整いつつある。8月25日(土)・26日(日)。DTM、そしてBMWにとって特別な夜が、幕をあける。