SUPER GT
GT300 Class
Round 8 MOTEGI GT 250km RACE

SUPER GT第8戦、ツインリンクもてぎ。
流れを引き寄せられなかった最終戦。惜しくも戴冠ならず。

万全か、波乱か。総決算を前にして、レースへの闘志は静かに燃えさかる。

ここまで7戦のうちで2勝を挙げ、2位との差は12ポイント。そして昨年のもてぎラウンドでは、今シーズンと同じパッケージで2位を獲得。このようなデータのもと、最終戦を前にした分析記事ではARTA BMW M6 GT3の圧倒的優位を伝えるものが目立った。しかし、当事者たちの捉え方は違っていた。12ポイントという差は、我々が入賞を逃し、ライバルがポディウムへと上れば易々と逆転されてしまう、危うい差でしかない。ふたりのドライバー、そしてスタッフたちは、最終戦のその先に待っているであろう歓喜の瞬間に向け、いま一度気を引き締めてツインリングもてぎへと乗り込んだ。ハンディ・ウェイトをすべて下ろしての決戦。風雲急を告げる予選前夜、サーキットには何かを暗示するかのように、雨が静かに降り注いでいた。

Q2へ進出するも、結果は10番手。すべてを賭けて、明日へ。

11月10日(土)。前夜からの雨は上がり、天気は回復傾向。このあとも、明日の決勝まで雨は降らないだろうとの予報が出ていた。しかし、朝の時点での路面状況はウェット。チームはドライ・コンディションでのセットを詰めるべく、路面が乾くまではピット作業のシミュレーション・トレーニングを行うことを決めた。午前8時50分、公式練習がスタート。しかし予想に反して、路面がなかなか乾かない。セッション開始30分が経過した頃からようやくレコード・ラインが乾き始め、ARTA BMW M6 GT3はコース上でセットを詰め始める。しかし、思うようにタイムが上がらないままセッションが終了してしまった。チームは急遽、公式練習後のサーキット・サファリ(観客を乗せたバスがゆっくりとコースを走る脇を、GTマシンが走りぬけていくセッション)の10分間も最大限に活用し、予選に向けたセットの改善を図った。最終戦の舞台、ツインリンクもてぎのロード・コースはただでさえオーバー・テイクが難しいうえ、距離は250kmというスプリント・レース。必然的に、予選の結果が非常に重要になるラウンドと言える。チームはQ2への進出を絶対条件に掲げ、Q1のステアリングを高木真一選手に託した。
午後2時、天気は曇り。今シーズン最後のQ1が始まってゆく。高木選手はセッション・スタートとともにコースへ。前方とのマージンを取りつつ、アタックを開始する。セッションが残り5分30秒になる頃、1分46秒775の2番手タイムを記録。結局このタイムを更新するマシンは現れず、高木選手は見事Q1を突破。ショーン・ウォーキンショー選手にステアリングを繋いだ。
GT500クラスのQ1を挟み、午後2時45分。運命のQ2。雲の切れ間からは太陽が覗いたものの、路面温度はQ1よりも下がっている。そのため、ショーン選手は周回を重ね、入念にタイヤへ熱を入れる。セッションが残り1分を切ったところでラスト・アタックへ。コース幅をめいっぱい使い果敢に攻めるが、思うようにタイムを伸ばせず1分47秒091で10番手。決勝はグリッド5列目からのスタートとなった。絶望的ではないが、楽観もできない微妙なポジション。前戦オートポリスのようなジャンプ・アップを、決勝で見せられるかどうかが鍵となる。

ショーン・ウォーキンショー選手コメント:
「素晴らしい予選、というわけにはいきませんでした。ですが、ペースもマシン・コンディションも良いので、明日は(無条件でチャンピオン獲得が決まる)4位以内でフィニッシュしたいと思います。」

高木真一選手コメント:
「まずはQ1突破が目標でしたが、思ったよりマシンのフィーリングも良く、2番手で通過することができました。10番手スタートではありますが、そこから少しずつ順位を上げるレースができればチャンピオン獲得の可能性が高まると思うので、しっかりと戦っていきたいです。」

安藤博之エンジニアコメント:
「コースが乾きだしてからQ1に向けたセットとタイヤの確認を行いましたが、コンディションにマッチしないところがあったので、サファリでユーズド・タイヤを履き、セットの変更を行いました。明日もレース・ペースは悪くないと思うので、チャンピオンが獲れるポジションまで順位を上げていけるよう頑張ります。」

死力を尽くした決勝も、天は我に味方せず。6ポイント差に泣く。

11月11日(日)、空は快晴。決勝前に行われたウォームアップ走行では、ARTA BMW M6 GT3がGT300クラスのトップ・タイムを記録。すべてを決する250kmの戦いに向けて、チームは最後までセットを詰めていった。マシンがグリッド上に並んでからも、ドライバーの表情に笑顔はない。ふたりは直前までチーム・スタッフと戦略を練るとともに、ドライブへのコンセントレーションを高めていた。
13時30分、運命の決勝がスタートする。ステアリングを握るのは高木選手。チームは数パターンの戦略を用意し、レースの展開を見ながらどの戦略を採るかを判断する方針でいた。序盤、ウォームアップ走行での好調ぶりそのままに、高木選手は良いペースで周回を重ねる。オーバー・テイク・ポイントの少ないコースにも関わらず、6周目と13周目に1台ずつを攻略し、8位へ。昨年のレースでは早めにピット・インするマシンが多く見られたため、今回のレースでチームはピットを遅らせる戦略を軸としていた。ライバルたちがピットへと向かっている間に高木選手がプッシュし、前方とのマージンを詰め、ピット終了後に逆転するという展開を描いていたのだ。しかし、チームの予想に反して早めのピットを選択するマシンは少なく、なかなか前方が開けない。周回が進むにつれ、ARTA BMW M6 GT3に残された選択肢はひとつ、またひとつと削られていった。思うようにマージンを詰められぬまま、高木選手は33周目にピットへ。ライバルがタイヤ無交換作戦を採ったため、チャンピオンへの可能性を諦めていないチームとしては、同様にタイヤ無交換作戦を採らざるを得なかった。高木選手はピットへ向かう前に、無線でタイヤの状態と使い方をショーン選手に伝え、後半セッションでの奇跡に望みを託した。
交代したショーン選手は6位でコースへと復帰。タイヤのウォームアップは必要ないため、アウト・ラップからフル・ペースでマシンを走らせる。しかし後続から迫るニュー・タイヤを履いたマシンとのサイド・バイ・サイドのバトルのなかで接触。右側のサイド・ミラーを破損し、ポジションを落としてしまう。後続車の確認にハンディを負うなかで、ショーン選手は懸命にマシンをコントロール。しかし次第に無交換のタイヤが厳しくなってきてしまい、ペースのキープが難しくなるなか、2台にオーバー・テイクを許してしまった。だがARTA BMW M6 GT3は、最後まで前を目指してコースを攻め続けた。
午後3時8分、チェッカー・フラッグ。結果は9位入賞。ドライバー・ランキングは6ポイント差の2位。ARTAとBMW M6 GT3の2018年が、幕を閉じた。

ショーン・ウォーキンショー選手コメント:
「残念なレースでした。後半はタイヤ無交換で行くことになり、残りの周回を頑張ってドライブしましたが、最後まで走りきるためにタイヤを保たせることが難しく、終盤は苦しみました。ドライバー・ランキングは昨年より良い結果となったので、来年はあとひとつしかない上を目指して頑張ります。1年間ありがとうございました。」

高木真一選手コメント:
「ミスなく、精一杯戦ったレースでした。1年間の戦い、ひとつひとつの積み重ねが重要であることを改めて感じました。このもてぎはオーバー・テイクが難しいコースなので、予選10番手からの追い上げは厳しかったです。マシンのコンディションは良く、単独で走れば十分に速かったので悔しさは残りますが、また来年に向け準備をしていきたいです。ありがとうございました。」

土屋圭市アドバイザーコメント:
「昨日の予選がすべてだったね。オーバー・テイクが難しいこのコースはやはり予選が重要。チャンピオンを獲得できなかったのは非常に残念だったけど、チームもドライバーもよく戦いきってくれたと思う。応援いただいたみなさま、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。」

今年の悔しさを、情熱に変えて。来シーズンこそ、栄光の頂点へ。

全8戦中2勝。獲得ポイント数、62ポイント。ドライバー・ランキング2位。2018年、ARTA BMW M6 GT3が記録した戦績は決して凡庸なものではない。昨年のドライバー・ランキングが4位だったことを考えれば、むしろ上々の成績として歓ぶべきかもしれない。しかし今シーズン、チームは間違いなく、チャンピオン獲得まであと少しの場所にいた。その「あと少し」を詰めるために、すべてのスタッフは春までの時間を準備と研鑽に充てる。頂点への挑戦は、今この瞬間から、再び始まっている。